相続コラム(遺言書)

井口 宏一 [プロフィール]

相続コラム

行政書士 井口宏一        


遺言者 井口宏一は本遺言書により以下の通り遺言する。


1.  妻 井口〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に次の預貯金のすべてを相続させる。

    りそな銀行 梅田支店 (店番号〇〇 口座番号 普通預金)〇〇〇〇〇〇〇

    りそな銀行 梅田支店 (店番号〇〇 口座番号 定期預金)〇〇〇〇〇〇〇

    三井住友信託銀行 川西支店(店番号 口座番号 普通預金)〇〇〇〇〇〇〇

    三井住友信託銀行 梅田支店(店番号 口座番号 定期預金)〇〇〇〇〇〇〇


2.  妻 井口〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に所有する下記不動産をすべて相続させる。

  1. 土地

    所在 大阪市北区曽根崎〇〇丁目

    地目 宅地 地番〇番〇 地積〇〇㎡

  2. 建物

    所在 大阪市北区曽根崎〇丁目〇〇番地〇〇号

    家屋番号 〇番〇 種類居宅 構造木造瓦葺2階建 


(中略)

    付言事項

    これまで仕事中心であった私の生涯を、妻は良く支えてくれました。

    とても言葉で言い表せない程、感謝しています。

    想えば結婚以来、身勝手な私によく尽くしてくれたと振り返っています。

    遺す遺産は少なく、申し訳なく思っています。今後もやりたいことをやり遂げるべく、

    頑張ってください。

    これまでありがとう。

20221010

住所 兵庫県川西市花屋敷〇丁目

〇番〇号101

遺言者 井口宏一


割愛部分はありますが、上記が私の保管した遺言書の要旨です。


 平素は人権相談員として相談業務を務める伊丹法務局 この日、私は自筆遺言書の保管申請に訪れました。

現在、各地の法務局では自筆証書遺言書保管制度の利用を募っています。

半年前のある日、私は法務局での相談業務の後、カウンターで1枚のパンフレットを手にしました。


「遺言書は次のような方にお勧めします。」こんなトップ面の説明に続き下の項目が目に入りました。

   ☑相続人がいない、又は大勢いる方

   ☑特定の相続人に財産を残したい方

   ☑子どもがおらず配偶者に遺産全部を遺したい方

子どもがいない私はパンフレットのキャッチコピーを見つめながら遺言書作成を決心したのです。


「相続トラブルの予防には遺言書を作成しましょう!」

これは私自身が銀行員時代によく口にした言葉です。

「社長さま。御社やご家族の為に、遺言書を作られたら如何ですか?遺言信託という商品をお勧めしますよ」

当時、カウンター越しに何度もこんな言葉を口にしました。

ですが、

『まだまだ先の話だろ。何を不吉なことを‥‥』こんな視線を投げ返されることが多かったと記憶しています。


あれから40年、人生100年時代と言われシニア世代の価値観も変わりました。

日本古来の家督制度から夫婦を単位とした核家族化へ日本は大きく舵をきりました。

「一家の大黒柱として男性は仕事に専念。その稼ぎで家族を養い、女性は家庭を守り育児と家事 そして年老いた親の介護」


こんな慣習を打ち破る時代が到来したのです。


現在、法務局の相談窓口や私の事務所ではこんな相談が多く寄せられます。

相続に関係するものとしては、

「兄弟の仲が良くない。兄は私に比べ親の経済的援助が無かったことを根に持っている。相続となればもめそうだ!」

「父が認知症になり、法定後見のお世話になっている。後見人の弁護士のやり方が元気な時の父の想いとかけ離れているように感じているのだが

「義母の介護を私一人が押し付けられ、仕事も止めなければならなかった。遺産分割では配慮してもらえるのですか?」

「祖父の時代からお隣との境界トラブルが未解決です。相続となれトラブルが表面化しそうです。」

「相続税や贈与税の控除特例って素人には難しくて。うちの場合どうなるのでしょうか?」

等々、不安や悩みを抱えておらえる方が多い事を実感します。


時代は変わったと言いながら、ご家族の介護で束縛される女性や、熟年者層の男女とそのご親族等、近い将来の相続に不安を抱えた方は増える一方と感じます。

非耕作農地や空き家・ゴミ屋敷問題について、国や自治体もやっと重い腰をあげたところです。

解決策としての試行錯誤は始まったばかりと言ってもよいでしょう。


私もお仲間に入れて頂いているティアレスクラブ相続チームには、相続業務に精通した弁護士、司法書士、税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士等の士業国家資格者をはじめ不動産、保険業務等のスペシャリストが在籍しています。

各専門家は業務上の知見に合わせ、精一杯の熱意でご相談者さまに寄り添います。

一人で悩まず、是非ご相談ください。


前回、コラムを担当された田坂先生が遺言書について詳しく解説されています。

私も「相続を争族にさせない為に遺言書作成を」と皆さまにお勧めしています。 

「そろそろ遺言書かな」

こんな風に感じられるなら、前回のコラムも是非ご参照ください。


各専門家のサポートが相続の悩み解決にお役に立つことを願っております。