相続税対策の考え方(第1回)

平井 真 [プロフィール]

私は、相続税に携わるようになって35年になる元国税調査官の税理士です。

平成元年大阪国税局に奉職後、資産税担当として28年間務めたのち退職し税理士登録。現在に至ります。

調査官時代には、相続税・贈与税や譲渡所得の実地調査は元より、それらの管理業務や路線価図の作成、窓口相談など一通り経験しました。

どういった内容のものが調査の対象となるのか、調査に来られたらどこをどう見られるのか、全て分かるといって過言ではないと思います。

 私のコラムでは、そんな元国税調査官の目から見た相続税対策の考え方についてお話しします。

 私は、相続対策のセミナーに講師としてお招きいただくことがよくあります。セミナー後の個別相談会には税金、遺言、登記などについての相談に応じるべく、行政書士・司法書士・FPの方々も待機しておられますが、相談者の関心の多くは「税について」ではないでしょうか。

 セミナー後の相談や無料の相談に訪れる方々の心配事の大半は、「相続対策をしないといけないが何をどうしたらいいのか分からない」という漠然としたものです。

 聴き取りを進めると、結構な割合で税金の話に辿り着きます。そのおうちの財産や家族の状況などから相続税がかかるかどうかを見極めるだけで、ほとんどの人は安心されます。

一般的に言われる「相続対策」の多くが相続税対策なのでしょう。

 ここで非課税と判断されればひとまず一件落着。

不動産の相続登記が義務化された今日、“その日”に向けて円滑に不動産の相続登記ができるか、遺言書を作成しておくのかなどを検討しておけば概ね不安は解消されるようです。

 他方、相続税が課税される場合はその対策を講じなければなりません。

 相続税対策と言っても、ほんの少し納税資金を確保しておけば済む場合もあれば、財産内容の組み換えや、不動産・自社株などの評価額を下げるための方策を講じなければならない場合もあります。

相続税対策の基本的な考え方は2つ。

相続の“その日”に向けて相続税計算上の財産を減らすこと納税資金を確保すること、です。

次回からもう少し掘り下げて、相続税計算上の財産を減らす方法について考えていきます。