相続に備えた登記の整理① 〜土地の境界〜
将来、子どもたちに残す土地について、また、ご自身が将来相続することが想定される土地について、事前に整理しておかないと困ったことが起こるかもしれません。
今回は土地の境界を明確にする作業についてご紹介いたします。
1.土地の境界を明確に!
相続時には限りませんが、土地を売却するときや土地を分割するときには、その土地とお隣さんとの土地との境界を確認する必要に迫られます。「境界確認」や「筆界確認」と呼ばれるこの作業を取りまとめて行うのは土地家屋調査士です。大切な財産に関わることですから当然ではありますが、なかなか大変な作業です。お隣さんと境界の認識が一致すれば問題ないのですが、互いに違う位置を境界だと認識していたり、お隣さんが行方不明で、専門家に探索してもらっても見つからなかったり(これが所有者不明土地問題です)、境界の認識は一致していると思われるけれども、仲が悪くて協力してもらえなかったりで、うまくまとまらないこともあります。
2.境界確認が必要になる場面
【土地を売却するとき】
相続発生後に、相続した土地を現金化して分けることがあります。土地を売却する際には、事前に、隣接地との境界を明確にする「境界確認」が求められます。法律で義務付けられているわけではないものの、現在の不動産取引では、境界を明確にするのが一般的です。境界が不明確なままでは売却価格が下がってしまうことが多いです。
【土地を分割するとき】
1つの土地を複数の相続人が分けて相続をするときや、1つの土地の一部を売却するときには、土地分筆登記申請(登記上で土地を分ける手続)が必要になります。土地分筆登記申請をする際にも、その土地に接する周囲の土地全部との境界が明確であることが求められます。こちらは法律で定められているため、境界が不明確なままでは申請が受け付けられません(一部例外あり)。住宅用の土地であれば、道路と接していることが多いです。道路の所有者はたいてい市町村や国なので、役所との協議や立会確認を行うことになります。役所への手続きはたいてい時間がかかります。道路や水路との境界を確認する場合には、その道路や水路を挟んだ対側の土地の所有者の同意も必要になることが多いです。
3.代替手段
境界確認が上手くまとまらなかった場合の代替手段は用意されていますが、いずれも期間や費用が多くかかるものです。円滑に行われる境界確認でも、月単位の期間が掛かって費用は数十万円からですが、代替手段を利用する場合には、早くて半年、長くて数年の期間とそれに比例した費用が必要になります。
【お隣さんと意見が合わないとき】
・筆界特定制度(法務局に申請)
・筆界確定訴訟&所有権確認訴訟(地方裁判所に提起)
・土地家屋調査士会ADR(支援センターに申立)
【お隣さんが行方不明のとき】
・筆界特定制度(法務局に申請)
・所有者不明土地管理人制度(地方裁判所に申立)
どの手段が適切であるかは状況によって異なりますので、土地家屋調査士にご相談いただければと思います。
4.早めの準備を!
相続時に慌てることなく手続きを円滑に進められるように、今のうちから土地の登記や境界の状況の確認だけでもしておくことをお勧めします。相続が発生してから、境界確認で揉めたり、お隣さんが見つからないといった事態になると大変ですから。
以上